私たちはスタッフのご厚意でスペシャリティレストラン2つを体験できるなど
楽しい経験が出来たのですが、この船に関しての客観的な意見を記載しておきます。
飛鳥Vが2025年7月に就航しましたが、同船に乗船した顧客からはかなり厳しい
批判が相次ぐ結果となっており、中には船側が30万円のデジタルクーポンを
配布したクルーズもあったようです。新就航の船においてはオペレーションが
混乱して顧客の不興を買うことはよくあることですが、同船の場合にはそれ以上に
根本的な欠陥を抱えているようです。以下に理由をまとめておこうと思います。
1.食の楽しみがスポイルされている
ラグジュアリークラスのクルーズ船に乗船する大きな楽しみの一つは毎回の食事
にあります。シェフが寄港先の名物などを使って毎日どんな料理を用意して
くれるのかが楽しみですし、例えば飛鳥Uなどでは100日に及ぶ世界一周
クルーズにおいても同じメニューの食事が提供されることはないといいます。
しかし、この船のメインダイニングの夕食のコースメニューでは連日同じ
メニューが提供されるなど、船のおもてなしを感じることはできません。
また、オーダーの際にはタブレット端末に表示されるメニューから乗客が
料理を選んでオーダーするスタイルで、紙のメニューが持つ特別感て、
ラグジュアリー感がないのは残念です。そしてアラカルトメニューの品質は
高くなく、レンチン、ファミレスレベルと言われても仕方がない水準です。
4つあるスペシャリティレストランの品質は素晴らしいのですが、
予約は困難で、またメニューに変化がないことには変わりがありません。
飛鳥Uでは最大800人程度のメインダイニング利用者を2交代制で
同一メニューを提供することによって対応していますが、飛鳥Vは最大600人
程度のメインダイニング利用者を指定時間なく受け入れ、そして日々同じ
メニューである結果、各人がアラカルトメニューを注文する率が高くなる
訳ですからサービスが追いつくわけがない気がします。
2、ドレスアップの楽しみがスポイルされている
ラグジュアリークラスの船を選ぶ顧客にとって、フォーマルナイトなどの機会に
普段はできないタキシードやドレスなどを着ておしゃれをし、豪華な船内に
醸し出されるきらびやかな雰囲気を味わうことも大きな楽しみの一つです。
しかし、この船は、高齢者比率が高い顧客の負担を下げる目的なのか、
すべてスマートカジュアルのドレスコードとなっています。この結果夜の
乗船客のドレススタイルに大きなばらつきが出てしまう結果となっています。
3.船内サービスの劣化
通常、クルーズ船では船内のイベント予定や寄港地の観光予定などを案内する
船内新聞が配布されるのですが、それがテレビ、スマホやタブレットで見る
ように置き換えられてしまっています(旅の思い出として残せません)。
また、タブレットやテレビの操作は慣れないと結構難しく、イベントの予約方法
も非常にわかりづらいです。レストランのメニューのタブレットも、慣れない
人には、スタッフの日本語練度の低さもあって扱いづらいだろうと思います。
また、船内イベントがかなり少なく、出港時のセイルアウェイイベントも
なかったですし、船員紹介などの乗客全員参加型のイベントは皆無でした。
また、クルーズ船の楽しみの一つである夜のショーもほとんどないに等しい
レベルでした。更に、船内のショップに陳列されている商品の相当数は
サンプルで、購入はオンラインショップでということです。
旅の高揚感とともにお土産を買う楽しみが損なわれていると感じます。
あと、船内での写真撮影、販売のサービスがない船も私は初めて見ました。
4.船の快適性
この船、外海ではかなりよく揺れます。そして揺れると部屋がビシビシ音を
立て、壁の額縁もガタガタ音を出します。また、洗面室やトイレのカギは
複数個所でドアを引っ張りながら操作しないとかからない、大浴場は排水に
問題点ががある、など船の造作の完成度はちょっと低いように感じられます。
5.スタッフの練度とサービスの洗練度の低さ(2025年10月時点)
スタッフは総じてまだ仕事にも日本語にも慣れておらず、対応のちぐはぐさが
目立ちます。また船内の英語アナウンスは聞いてて恥ずかしくなるレベルです。
また、デジタル化した弊害なのか融通の利かない対応が気になりましたし、
クルーズ船では一般的な夕方のターンダウンサービスもありません。
ビュッフェではトレイの用意がなく、朝食でごはんと汁物、おかずを取った
際複数の食器を運びようがない、など色々な面で配慮が足りないと感じました。
私たちの乗船したクルーズにおいては、スタッフの練度の低さ、そして人手不足
もあってか定員の7割程度に乗客数を抑えていたそうです。また、4つある
スペシャリティレストランでも席数の半分程度に客数を抑えて運営しており、
私たちが行ったときも空席がかなり目立ちました。予約が取れずに残念に
思っている多くの顧客の納得できる対応ではないのでは、と感じました。
飛鳥Vは価格帯の高い日本船の中でも特に高価な設定となっており、他船のスイート
クラスの船室とこの船の一番下の船室が同程度の価格、一泊15万円程度の設定と
なっています。この金額とこのサービスは釣り合っているとは言い難いです。
乗客の多くは高齢者であるように見受けましたが、デジタル主体のサービスは高齢者
には向きませんし、どんな顧客層を想定し、それに対してどんな満足感を提供しよう
としているのかのコンセプトがないように見えます。
クルーズ旅行を考えるにあたり、この船を選択する意味を見出すことは難しいです。
キュナードやシルバーシーズなどの外国船、あるいはミツイオーシャンフジなどの
他の日本船を選んだほうが、或いは、プリンセスクルーズやコスタクルーズのように
安価なカジュアル船を選んだ方が後悔なく楽しめるのではと思います。
…改めてぱしふぃっくびいなすやにっぽん丸のような手作り感のあるサービス
が出来た旧来の日本船は良かったと思います。退役が残念でなりません。
http://www.cruisingbbs.jp/thread.php?id=82